
生産管理システムを検討し始めると、「計画を自動で立てます」「原価を分析します」といった言葉がずらりと並びます。でも、町工場の経営者として率直に思うのは「うちの現場、そもそも計画どおりに動かへんねんけどな」ということではないでしょうか。
この記事では、生産管理システムが担う役割を整理したうえで、私たち日本ツクリダスがつくった「エムネットくらうど」が製造業の中で何を担い、どこを目指しているのかをお話しします。
この記事の要点
- 生産管理には「計画・進捗管理・分析」の3つの役割があります。
- 町工場では計画が毎日崩れるからこそ、まず現場の「今」を見えるようにすることが大切です。
- エムネットくらうどは「計画」よりも「進捗の見える化」に重心を置き、現場の人と組織が自分たちで考えて動ける状態を目指しています。
先に結論を言うと、エムネットくらうどは「計画」よりも「進捗の見える化」に重心を置いた生産管理システムです。そして最終的に目指しているのは、効率化そのものではなく、現場の人と組織が自分たちで考えて動けるようになることです。
生産管理システムの3つの役割と、エムネットくらうどの立ち位置
一般的に、生産管理は大きく3つのフェーズに分けられます。
| フェーズ | 中身 | 一般的なシステムの傾向 | エムネットくらうど |
|---|---|---|---|
| ① 計画 | いつ・誰が・何を作るかを決める | 自動スケジューリングなど強みが多い | 自動では組まない(ガントチャートで人が調整) |
| ② 進捗管理 | 今どこまで進んでいるかを把握する | 力を入れている製品は少なめ | ここに特化 |
| ③ 分析 | 実績を集計し、改善につなげる | 強みが多い | 実績データを出力し、自由に集計できる形で渡す |
市場にある生産管理システムの多くは、計画と分析に強みを持っています。一方で、進捗管理に力点を置いたものは少ない、というのが私の実感です。
エムネットくらうどは、あえてその「進捗管理」に重心を置きました。理由はシンプルで、町工場では計画を立てても、計画どおりにはほぼいかないからです。
なぜ「計画」ではなく「進捗の見える化」なのか
町工場の受注構造では、計画は毎日崩れる
たとえば2週間後に納める予定の製品を受注して、予定どおりならちゃんと間に合う段取りを組んだとします。ところが翌日、別のお客様から「これ1週間でなんとかならへん?」と特急の依頼が入る。それを入れると、最初の2週間の予定はもう成り立ちません。
多品種少量の現場では、これが毎日のように起こります。受注構造がピラミッド型である以上、町工場はいろんな要素に振り回されるんです。真面目に計画を立て直し続けたら、システム上は「こんなん間に合えへん」という状態になってしまいます。
でも、不思議なことに町工場の現場はなんとかするんですよね。「お前これやってくれるか、俺こっちやるから」と、ピークのときに人の力で裁いてしまう。言葉では説明しにくいけれど、職人さんたちはそういう能力を持っています。
だから私は、いくら計画をうまく立てても通用しないなら、まず現場を見える化して、現場がうまく動けるようにすることが一番の近道だと考えました。管理する側から現場が見えれば、軌道修正ができる。これが最初にやるべきことだと思っています。
「管理したら仕事が増えた」という原体験
私がこう考えるようになったのには、きっかけがあります。
日本ツクリダスを立ち上げる前、私は父の経営する鉄工所で働いていました。当時、Excelで受注を一覧にして管理し始めて初めて分かったのが、納期を守れていたのが3割ほどしかなかったという事実です。しかも調べてみると、品物はできあがっているのに、納品に持って行っていないだけ、というケースが多かったんです。
そこで、納期のものを出荷前に必ず積み込むようにしたところ、数か月で納期遵守率は9割ほどまで上がりました。するとお客様から「最近遅れへんな」と言っていただけるようになり、注文が増え、売上は当初の月300〜400万円ほどから、月によっては700〜800万円ほどの注文をいただけるまでになりました。
この経験で、私は**「管理をちゃんとすると、信頼が得られて、仕事が増える」**ということを身をもって知りました。「生産管理なんかやってもお金にならへん」とおっしゃる経営者の方にこそ、この話は伝えたいと思っています。
エムネットくらうどが製造業の中で担うこと
エムネットくらうどは、私たちが金属加工業を営んでいたころ、自社を管理するためにつくったシステムです。当時は月に図面を千枚ほど、1枚につき1〜10個程度のロットで注文をいただき、そのうち3割を社内で、7割を協力会社さんにお願いしていました。
その図面がいま社内にあるのか、外注さんのところにあるのか、どの工程まで進んで誰が持っているのか。それを見えるようにしたい、というのが開発の一番の目的です。2014年のリリースから10年以上が経ち、おかげさまで現在は約170社の皆さまにご利用いただいています。
具体的に担っている役割は、次のとおりです。
1. 注残リスト:今どれだけ仕事を抱えているかを見える化する
まず大事なのは、「自分たちは今、どれだけの仕事を抱えているのか」を全員が同じ画面で把握できることです。お客様から納期確認の電話があっても、工場の中を走り回らずに答えられるようになります。
2. 工程進捗管理:どこまで進んで、誰が持っているかを見える化する
図面や指示書にバーコードを貼り、現場で「ピッ」と読むだけで、工程の開始・完了が記録されます。社内工程も外注工程も、案件ごとに一つの流れで追いかけられます。
3. 日報・作業実績の収集
バーコードの読み取りがそのまま作業実績になるので、手書きの日報を集計し直す手間を減らせます。実績データは書き出せるので、集計の仕方は各社で自由に決めていただけます。
4. 図面・ファイル・チャットを案件に紐づける
イレギュラーは、どうしても発生します。それを乗り越えるには、結局は人どうしがやり取りしながら対応するしかありません。「この仕事、こういうトラブルで止まってます」「納期短縮の依頼が来てますけどいけますか?」といった会話を、わざわざ手を止めて聞きに行かなくても、案件に紐づいたチャットでその場で交わせるようにしています。
5. 基幹システムとの役割分担
すでに販売管理や基幹システムをお持ちの会社では、数字や伝票は基幹システムに任せ、現場の進捗・プロセス・記録はエムネットくらうどが受け持つ、という役割分担ができます。CSVでの取り込みや、汎用APIでの連携にも対応しています。
各機能の詳細は、機能紹介ページでご覧いただけます。
あえて「やらないこと」に込めた思想
エムネットくらうどには、一般的な生産管理システムなら当然ありそうな機能を、あえて入れていない部分があります。ここに、このシステムが何を担おうとしているのかが一番よく表れていると思います。
入力を待たずに、いきなりバーコードを出す
開発当初、私が最初にお願いしたのは「何も入力しなくても、まずバーコードだけ発行できるようにしてほしい」ということでした。開発者の方には「そんなの無理です」と言われました。システム屋さんからすると、番号だけ持っていても意味がない、という感覚なんですよね。
でも、町工場では、品物を手渡されて「ここに穴開けといて」と頼まれることもあります。品名も分からない、注文書は後から来る。それでも急ぎなら、すぐに現場を動かさないといけません。**バーコードさえ貼っておけば、名前や数量は後から足せばいい。**この発想が、今の「マスター登録なしで、その日から使える」設計につながっています。
エラーチェック・矛盾チェックをしない
日付が矛盾していても、エムネットくらうどは止まりません。これも開発者の方と「本当になくていいんですか」「いらん、いらん」というやり取りをした部分です。
先ほどお話ししたとおり、町工場の現場では、システム上は「不可能」でも人が調整してなんとかします。**見える化はシステムがやる。でも調整は人がやる。**これがエムネットくらうどの一番のこだわりです。被っていて遅れそうな案件がデータとして見えてさえいれば、現場はいくらでも調整できます。
自動スケジューリングをしない
同じ理由で、システムが自動で予定を組むこともしません。ガントチャートは、人が見ながら動かして調整するための道具です。
「職人さんは何も考えずに、画面に出た指示どおり動けばいい」という仕組みは、一見やさしそうに見えます。でも私には、現場の人をロボットのように扱っているように聞こえてしまうんです。
全員そろわなくても始められる
システム導入というと、「全員で一斉にやらなあかん」と思われがちです。でも、10人の会社で1人が入力を忘れたら残り9人の仕事が進まない、という仕組みは望ましくないと私は考えています。
エムネットくらうどは、工程を作らずに注残リストだけ使うこともできるし、工程を作っても着手・完了の記録までは求めない、という使い方もできます。**まずは「これでいいね」と思えるところから始めて、段階的に広げていける。**事務所だけで使い始めて、それを見た現場の人が「便利そうやな、俺らもやってみよか」となる。そんな広がり方が理想です。
エムネットくらうどが目指すもの:生産管理は「人と組織を育てる手段」
ここまでお話ししてきたことを一言でまとめると、私はエムネットくらうどを、製造現場を成長させるためのシステムだと考えています。生産管理はそのための手段であって、本当の目的は、人である組織が成長していくことです。
仕事は、本来楽しいはず
自分たちで考えて、段取りを組み替えて、「よっしゃ、間に合わせたぞ」と言える。仕事の楽しさや達成感は、そういうところから生まれると私は思っています。システムがすべて決めてしまえば、その楽しさは失われてしまいます。
だからこそ、エムネットくらうどは「情報は見えるようにする。決めるのは人」という線引きを守っています。
社長がいなくても回る会社へ
私たちが製造業をやっていたころ、エムネットくらうどで情報が共有できるようになってからは、私が会社にいなくても仕事が回るようになりました。以前は特定の事務員さんがほぼすべてを把握している状態でしたが、誰が見ても状況が分かるようになり、事務の負担も大きく減りました。完全週休2日制にしても売上が下がらなかったのは、この見える化のおかげだと思っています。
経営者が現場に張り付いていなくてもいい。そうなって初めて、社長は会社の将来をつくる仕事に時間を使えるようになります。
町工場を、もっと元気に
私たちの根っこにあるのは、「町工場が元気になればいい」という思いです。町工場という言葉には、まだネガティブなイメージがつきまといます。だから私は、あえて「町工場」と言い続けています。
ありがたいことに、こうした取り組みは、全国中小企業クラウド実践大賞での近畿総合通信局長賞や、経済産業省のDXセレクション2024での優良事例選定という形で評価をいただきました。2024年には、中小企業でもできる「ちょうどいいデジタル化」をまとめた本も出版させていただいています。ただ、どれも私たちが特別なことをしたわけではなく、同じ悩みを抱える町工場として、目の前のことを一つずつ整えてきた結果だと思っています。
実際にエムネットくらうどを使っている会社さんの声は、導入事例ページでご紹介しています。
まとめ
- 生産管理には「計画・進捗管理・分析」の3つの役割があり、エムネットくらうどは進捗管理(見える化)に特化している
- 町工場では計画が毎日崩れるからこそ、まず現場を見える化し、調整は人が行うという考え方をとっている
- 担う役割は、注残リスト・工程進捗・作業実績・図面やチャットの一元化、そして基幹システムとの役割分担
- あえて「いきなりバーコード」「エラーチェックなし」「自動スケジューリングなし」「全員一斉でなくていい」という設計にしている
- 目指しているのは、効率化そのものではなく、現場の人と組織が自分たちで考えて動けるようになること
よくある質問(FAQ)
Q1. エムネットくらうどは、一般的な生産管理システムと何が違うのですか?
A. 多くの生産管理システムが計画立案や分析に強みを持つのに対し、エムネットくらうどは「今どこまで進んでいるか」の見える化に特化しています。マスター登録なしでバーコードを発行してすぐ使い始められること、エラーで止まらず順番を飛ばしても使えることが大きな違いです。
Q2. 自動で生産計画を立ててくれる機能はありますか?
A. 自動スケジューリング機能はあえて搭載していません。計画が必要な場合は、オプションのガントチャートで、人が状況を見ながら予定を調整していただく形です。割り込みや特急が多い現場ほど、自動計画よりも「見えている状態で人が判断する」ほうが現実的だと考えています。
Q3. すでに基幹システムを使っていますが、併用できますか?
A. はい。基幹システムから出力したデータをCSVで取り込んだり、APIで連携したりすることができます。数字や伝票は基幹システム、現場の進捗や記録はエムネットくらうど、という役割分担でお使いいただいている会社さんもあります。
Q4. 社員全員がシステムに慣れるか不安です。
A. 全員が一斉に使い始める必要はありません。注残リストだけ、事務所だけ、といった小さな範囲から始めて、段階的に広げていくことができます。詳しくはよくあるご質問もご覧ください。
まずは無料デモで、実際の画面を見てください
ここまで読んでいただいて、「うちの現場でも使えるやろか」と少しでも感じていただけたなら、ぜひ一度、実際の画面をご覧ください。
私たちはシステム会社として売り込むのではなく、同じ製造業の悩みを経験してきた立場から、御社の現場の言葉でお話しします。「まだ導入するか決めていない」という段階でも、まったく構いません。
料金プランについては料金ページでもご確認いただけます。
角野 嘉一