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町工場のDX入門|まず何から始めるべきか【2025年版】

町工場のためのDX入門:まず何から始めるべきか

「DXって言葉はよく聞くけど、うちみたいな小さい町工場には関係ない話でしょ?」

そう思っている町工場の社長、実は大間違いです。DX(デジタルトランスフォーメーション)は大企業だけのものではありません。むしろ、人手不足や効率化に悩む町工場こそ、DXで大きな効果を実感できるのです。

この記事では、「何から始めればいいかわからない」という町工場の社長に向けて、身近で実践的なDXの第一歩をご紹介します。



そもそもDXって何?町工場社長のための基礎知識

DXとは本来、大がかりな改革を意味するものではありません。むしろ、今の業務を少しずつでもやりやすくすることが、その出発点になります。では、実際にどんなことがDXにあたるのでしょうか。

DXは「大がかりなシステム導入」ではない

「DXには多額のコストがかかる」と思い込んでいる町工場の社長は少なくありません。

確かに、大企業では数千万円規模の投資を行うこともありますが、町工場にとってのDXは、もっと身近で小さな改善です。本質は、「デジタル技術を使って業務を改善し、会社をより良くすること」にあります。

  • 毎日の面倒な作業を楽にする
  • お客様への対応を、より迅速かつ正確に行えるようにする
  • 社員にとって働きやすい環境を整える

こうした改善ができれば、それだけで立派なDXです。「DX=難しいもの」と構えず、自社の業務にフィットする形を探るところから始めてみましょう。



町工場でよくあるDXの例

たとえば町工場では、次のような取り組みがDXにつながります。

紙の工程表 → タブレットやスマホで管理

紙で管理していた工程表を、タブレットやスマホで確認できるようにすることで、確認作業が減り、段取りミスも防ぎやすくなります。

電話での進捗確認 → 画面でリアルタイム確認

「今どうなってる?」と都度確認していた進捗も、画面で共有できれば、現場とのやりとりがぐっと楽になります。

手書きの伝票 → バーコード管理

作業実績や在庫の記録をバーコードで読み取れば、転記ミスが減り、事務処理も効率化されます。

記憶頼み → データ管理

ベテランの記憶や紙に頼っていた情報をデータ化すれば、誰でも同じ情報を簡単に確認できます。属人化の防止にも有効です。



なぜ今、町工場にDXが必要なのか?

現時点では大きな問題がないと感じていても、町工場を取り巻く環境は確実に変わりつつあります。業務が回っている今こそ、見直すタイミングかもしれません。

ここでは、DXに取り組むべき理由を、実際の現場課題から考えてみましょう。

1. 人手不足の深刻化

製造業の人手不足は年々深刻になっています。求人を出しても応募が来ない、育っても辞めてしまうといった声が後を絶ちません。

こうした状況では、人を増やすよりも、今いる人員でどう効率よく仕事を進めるかが重要になります。1人あたりの生産性を高め、人手不足の深刻化を乗り切って行かなければなりません。



2. お客様の要求レベル向上

取引先からの期待は年々高まり、納期回答や進捗報告のスピード・精度が重視されるようになっています。

たとえば、納期の問い合わせが入った際に、その場で答えられずに「確認して折り返します」と伝える状況は少なからずあるのではないでしょうか。その後も現場まで確認しに行ったり、図面や仕様書を探す作業に時間がかかったりと、情報のやりとりには手間がかかりがちです。

取引先の要求レベルに応えるためにも、DXによって必要な情報にすぐアクセスできる環境を整える必要があります。



3. 競合他社との差別化

同業他社がまだアナログ管理をしている今こそ、DXで差をつけるチャンスです。2024年、Tech Factoryが製造業を対象に実施した調査では、「自社はアナログ業務が多い」と6割以上の方が回答しました。つまり、今このタイミングで一歩を踏み出せば、他社よりも一足早く改善に着手できるということです。大きな差は、小さな取り組みの積み重ねから生まれます。

出典:根強く残る「紙ベース」の業務、製造業の6割が「アナログ業務」の多さを実感


成功する町工場のDX、3つのパターン

DXはできることから少しずつ始めることが大切です。ここでは、工程管理ソフト「エムネットくらうど」の導入事例を用いて町工場のDX成功パターンを3つご紹介します。

パターン1:「困りごと解決型」DX

金属製品製造業T社では、ホワイトボードでの工程管理に限界を感じていました。誰が何をいつ作業しているのか把握しづらく、納期確認にも時間がかかる状態。管理の負担が社長や一部のスタッフに偏りがちな点も課題でした。

そこで、まずは社長自らがタブレットで工程入力を開始。使いやすさを実感したうえで、徐々に現場へ展開しました。導入後は、事務所にいながら全体の状況が把握できるようになり、納期回答や調整のスピードも向上。図面の量で進捗を判断していたような感覚頼みの管理から脱却できたといいます。

出典:有限会社高柳エンジニアリング様「ホワイトボードでの管理に限界を感じていた。」


パターン2:「効率化追求型」DX

鉄鋼製品の製罐板金業を手がけるK社では、長年紙ベースで工程管理を行っており、担当者に業務が集中していました。こうした状況下では、退職や引き継ぎのたびに、業務が滞るリスクもあります。

これらの課題を解消すべく、工程管理システムを導入。操作が簡単で、他のスタッフも使えるようになり、「自分の時間に余裕ができた」と効果を実感しています。社内の情報共有もスムーズになり、外出先や自宅でも状況を確認できるようになりました。

出典:共立工業有限会社様「紙管理をなくしたことで、自分の使える時間が増えた。」


パターン3:「手軽で簡単」DX

製缶・機械加工を営むN社では、長年システム導入を検討してきたものの、金額や規模が合わずに断念を繰り返してきました。工程や納期の管理も明確な仕組みがなく、現場のベテラン従業員の経験に頼っていたといいます。

製缶・機械加工を営むN社では、長年システム導入を検討してきたものの、金額や規模が合わずに断念を繰り返してきました。工程や納期の管理も明確な仕組みがなく、現場のベテラン従業員の経験に頼っていたといいます。

そんな中で出会ったのが、導入費用が手頃、かつ操作が直感的な工程管理ソフトです。73歳のベテラン従業員もすぐに使いこなし、「作業が楽になった」「時間短縮になった」と現場からも好評の声が上がっています。これまで難しかった事務所からの工程把握も可能になり、現場との連携もスムーズになりました。

出典:N鉄工様「70代のスタッフでも使える簡単なシステムだと思った。」


今日から始められる!町工場DXの第一歩


では、具体的に何から取り組めばDXを始められるのでしょうか。ここでは、今すぐに始められる4つのステップをご紹介します。

ステップ1:現状の「困りごと」を書き出す(5分)

はじめに、業務の中で感じている「やりにくさ」や「手間」を紙に書き出してみましょう。
たとえば、次のような困りごとはありませんか?



事務所での困りごと 現場での困りごと
・納期管理に時間がかかる
・図面や資料を探すのに手間取る
・現場の進捗状況がわからない
・お客様への回答に時間がかかる
・作業指示書が見つからない
・次の作業が何かわからない
・材料の在庫が不明
・完成品の置き場所を探してしまう

こうした日々のちょっとした困りごとこそ、DXの入り口です。



ステップ2:一番困っていることを1つ選ぶ

たくさんの課題が出てきても、一度にすべて解決しようとする必要はありません。あれもこれもと手を出すと、かえって現場が混乱しやすくなります。

まずは、今、1番困っていることを1つだけ選んでください。
その1点に絞って取り組むことで、現場の理解や協力も得やすくなります。



ステップ3:解決方法を調べる(1日)

選んだ課題に対して、どんな手段があるかを調べてみましょう。

  • 他の町工場では、どんな方法で解決しているのか
  • どんなツールやシステムが課題解決に役立つか
  • 費用感や導入までにかかる時間はどのくらいか

最近は、製造業向けの導入事例や比較情報もインターネットで手軽に調べられます。可能であれば、実際に導入している企業の声を参考にすると具体的なイメージが掴みやすくなります。



ステップ4:小さく始める

最初から大きな投資をする必要はありません。月額数万円程度で始められるサービスから試してみましょう。

「いつでもやめられる」と思えるくらいの気軽さがあれば、現場も安心してチャレンジしやすくなります。小さく始めて、効果を感じたら少しずつ広げていきましょう。



町工場DXでよくある3つの失敗パターン

DXを進める際、多くの町工場でつまずきやすいポイントがあります。最後に、よくある失敗例とその回避方法をまとめました。

失敗パターン1:「いきなり全員で始める」

現場全体で一斉に新しいシステムを使い始めようとすると、反発が生まれかねません。また、慣れない操作に戸惑いが生まれ、定着せず失敗に終わってしまう可能性もあります。

回避方法



まずは社長や一部の担当者だけで試してみて、手応えを感じてから段階的に広げていくのが効果的です。

一部の担当者や部署からだけのような始め方も可能と、柔軟性の高さがポイントです。反対している人に無理にお願いしたりということもなくなり、できる人から徐々に慣れていきながらスタートさせることだってできてしまいます。



失敗パターン2:「高額システムを導入」

一気に本格的な仕組みを整えようと、高額なシステムを導入したものの、費用対効果を感じづらく途中で頓挫してしまうケースも少なくありません。

回避方法



最初は月額数万円程度の無理のない範囲で、小さく試せるものから始めましょう。

サブスクモデルで低価格に始められます。しかも1年契約なので、もし万が一続けられないという事態に陥ってもやめることができるというのは安心材料のひとつです。



失敗パターン3:「機能重視でシステム選択」

「機能が多い=良いもの」と思いがちですが、実際には現場で使いこなせなければ意味がありません。複雑な操作がハードルになることもあります。

回避方法



現場目線で「誰でも簡単に使えるか」を最優先し、操作しやすいシステムを選びましょう。



現場の見える化にスポットを当てた機能に絞り込んでいます。自社製造業だったからこそ分かる現場が知りたい情報をかんたんに共有することから始められます。



まとめ:町工場DXは「小さく始めて、大きく育てる」

町工場のDXは決して難しいものではありません。大切なのは次の4つです。

  1. 困りごとから始める
  2. 小さく始める
  3. 段階的に進める
  4. 現場の声を聞く

まずは、目の前の困りごとを1つ洗い出し、解決策を調べ、小さく試してみてください。そのサイクルを重ねることで、現場にも自然と馴染み、効果も実感しやすくなります。

DXは一歩ずつ進めれば、必ず成果が出ます。今日から第一歩を踏み出してみませんか?