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バーコード管理の基本:なぜピッと読むだけで管理できるのか
製品を一つひとつ数えて台帳に記録する作業は、思っている以上に手間がかかるうえ、ミスも起こりがちです。「また数え間違いか……」とため息が出ることもあるのではないでしょうか。
そんな悩みを解決してくれるのが、バーコード管理です。製造業の現場では、製品や部品に貼られたバーコードを「ピッ」と読み取るだけで、在庫数の把握や進捗の記録がスムーズに行えます。
この記事では、バーコードの基本から、製造業における具体的な使い方までを、わかりやすく紹介していきます。
バーコードって何?基本的な仕組みを理解しよう
まずはバーコードの基本的な仕組みを理解しましょう。日常的に目にすることは多くても、その構造や読み取りの原理を正しく知っている方は意外と少ないはずです。
バーコードの正体
バーコードとは、黒い線と白い線の組み合わせで情報を表したコードです。黒い線(バー)と白い線(スペース)の幅の違いによって数字や文字を表します。バーコードリーダーが光を当てると、その反射の違いを読み取り、瞬時にデジタルデータに変換します。
なぜ「ピッと読むだけ」で情報が分かるのか?
読み取りの仕組みはシンプルです。
バーコードリーダーは赤色レーザーやLEDライトで光を照射します。黒い部分は光を吸収し、白い部分は反射するので、その明暗パターンを電子信号に変換して情報を読み取ります。
高性能なリーダーなら、1秒間に数十〜数百回の読み取りが可能です。エラーチェック機能もあり、手入力に比べて99.9%以上の高い精度を誇ります。
製造業で使われるバーコードの種類
製造業では、用途に応じてさまざまなバーコードが使われています。
1次元バーコード(一般的)
- CODE128:英数字対応、汎用性が高く多くの現場で採用
- CODE39:英数字と記号に対応
- ITF:数字のみ対応、段ボール印字に最適
情報量の多いデータを扱いたい場合には、以下の2次元コードが用いられます。
2次元コード(高機能)
- QRコード:スマートフォンでも読み取れ、大容量の情報を格納可能
- DataMatrix:小さなスペースにも印字でき、部品管理に最適
バーコードは、目的や運用に応じて使い分けることが大切です。
製造業でバーコード管理を使うとどう変わる?
では、バーコード管理を導入すると、どれほどの成果があるのでしょうか。ここでは、製造業の現場で実際に得られている効果を、数字や事例を交えて紹介します。
メリット1:作業時間の劇的短縮
製造業において入力作業やチェック作業は、積み重なると大きなロスになります。紙の伝票に手書きしていた作業報告も、バーコード管理ならわずか1〜2秒。従来かかっていた30秒〜1分と比べて大幅な時短です。
実際に、ある現場では11時間かかっていた棚卸し作業が、バーコード活用により3時間で完了し、作業人数も4名から2名に削減されたという事例もあります。
メリット2:入力ミスの大幅削減
製造業の現場では、一つの数字のミスが大きな手戻りやクレームにつながることも珍しくありません。
1日100件の処理があれば、0.1〜1%のエラー率でも1〜10件のミスが発生する可能性があります。そのたびに訂正作業が発生し、時間も人手も奪われてしまいます。
バーコード管理なら、そのリスクを低減できます。たとえばCODE39の誤読率は、300万文字に1文字にすぎません。
誤った情報を読み取った場合は「エラー」として弾かれる仕組みがあり、その場ですぐに気づける点もメリットです。
メリット3:リアルタイム情報管理
作業の進捗をその場で即座に可視化できることも、バーコード管理におけるメリットのひとつです。
作業開始時と完了時にバーコードを読み取れば、その時刻が記録されます。同時に、作業の所要時間も自動で算出されます。
こうして工程ごとの動きが「リアルタイム」でシステムに反映されるため、管理者が現場に足を運ばなくても状況を把握できるようになるのです。
メリット4:コスト削減効果
バーコード管理の導入は、コスト削減にも貢献します。
まず、人件費です。人手による記録作業が減るため、管理業務にかかる時間や人員を削減できます。事務スタッフだけでなく、現場作業員の生産性も向上します。
もうひとつが在庫管理に関わるコストです。在庫を正確に把握できることで、過剰在庫や欠品を回避できます。棚卸しのたびに膨大な時間と人手がかかっていた企業では、とくに導入効果が顕著に現れやすいでしょう。
メリット5:トレーサビリティの確保
バーコード管理をすれば、いつ、誰が、どの工程で作業したのかを記録できます。
万が一トラブルが発生した場合でも、原因の特定がすぐに可能です。製造業にとって、品質管理やクレーム対応の面でもバーコード管理が役立ちます。
実際の製造現場ではどう使うの?生産管理での活用例
バーコードの仕組みや導入効果がわかっても、実際に生産管理でどう使えばよいのか、イメージが湧きにくいかもしれません。この章では、製造業の現場での代表的な活用シーンを紹介します。
活用例1:工程管理での使い方
工程管理では、「誰が・いつ・どの工程を・どれだけ進めたのか」を把握しなければなりません。紙の日報やエクセルで追ってると、どうしても抜けやズレが出やすい傾向にあります。
そこでバーコードの出番です。作業指示書や図面にバーコードシールを貼っておけば、作業の開始と終了で「ピッ」とするだけで、時間や進捗が自動で記録されます。案件ごとに1つだけバーコードを付ける方法もあれば、工程ごとに分ける方法もあり、やり方は現場次第です。
この仕組みがあると、工程別の進捗状況、工程ごとの所要時間、担当者別の作業実績が数字で見えてくるので、改善の話もしやすくなります。
活用例2:在庫管理での使い方
在庫管理も、手作業だと「数え間違えた」「台帳に記入し忘れた」といったミスが、現場ではよくあります。
バーコードを使えば、材料や部品の入庫時に「ピッ」で在庫が自動でプラス、出庫時も「ピッ」でマイナス。棚卸しも読み取るだけなので、一個一個紙に書くより作業が早く、間違いも減ります。
完成品にバーコードを貼っておけば、個体管理が可能になるため出荷履歴もすぐにわかります。返品があってもバーコードを読み取るだけで、履歴の呼び出しと在庫計上が完了です。
活用例3:品質管理での使い方
品質管理は、記録を残すのが地味に大変です。検査項目ごとに○や×を書いて、あとからシステム入力するやり方には、転記ミスや記録もれのリスクがあります。
検査項目ごとにバーコードを設定すれば、「合格」「不合格」の結果を読みとるだけで、結果がリアルタイムでシステムに反映されます。
設備の点検も同様です。設備ごとにバーコードを貼って、点検内容をバーコードで選択すれば、その日の作業者や実施日まで自動記録。履歴が残っていれば、不具合が出たときも「前回いつ、誰が点検したか」がすぐにわかります。
活用例4:外注管理での使い方
外注先とのやり取りも、紙や口頭だけだと進捗が見えづらいはずです。そこで、外注依頼ごとにバーコードを発行しておけば、外注先でも同じコードで進捗管理ができます。納期や品質情報をリアルタイムで共有。納品されたらバーコードを読み取り、受入完了。同時に外注先での作業履歴も把握可能です。
もし品質問題が起きても、「いつ・どこで・どんな作業をしたのか」が一発でわかるので、責任の所在もはっきりします。無駄なやり取りが減って、トラブル対応もスムーズになります。
バーコード管理を成功させる5つのポイント
バーコード管理は、せっかく機器やシステムを導入しても、「現場が面倒がって使わない」「データが揃わない」という失敗例は珍しくありません。 ここでは、現場と管理部門の両方が使いやすく、長く続けられる仕組みにするための5つのポイントをご紹介します。
ポイント1:適切なバーコードの選択
まずは、どのレベルまで管理するかを決めるところからです。案件ごとでざっくり管理するのか、工程ごとに細かく追うのか、あるいは部品単位で精密に管理するのか。この判断で運用の手間も精度も変わってきます。
バーコードの種類も、使う場面で選びましょう。狭い場所ならDataMatrix、幅広く使うならCODE128、スマホ読み取りを前提にするならQRコード、といった具合です。
エムネットくらうどなら、システムでバーコードを発行するように設計されているので、どのようなバーコードを選べばいいのかなんて悩む必要はありません。
ポイント2:読み取り機器の選定
現場の使いやすさに考慮して機器を選ぶことも重要です。手に持って動き回れるハンディタイプ(4,000円〜)が一番ポピュラーですが、同じ場所で繰り返し読み取るなら据え置きタイプのほうが楽です。スマホに専用アプリを入れて使う方法もあります。
選ぶ基準には、読み取り精度とスピード、操作のしやすさ、そして現場の環境への耐久性が挙げられます。たとえば、油や粉じんが多い現場なら、防塵・防滴仕様は必須です。
エムネットくらうどなら、安価なものからスマホタイプのものまでいろいろな推奨品をご提案できるので、何を買えば良いのか悩む必要はありません。
ポイント3:運用ルールの設定
バーコードは貼る場所やタイミングがバラバラだと混乱します。図面に貼るのか製品に貼るのか。受注時に貼るのか加工前に貼るのか。そして貼るのは誰なのかーー現場か、事務所か。これを決めておくことが大事です。
読み取りのルールも同様に、開始時と完了時の両方で読み取るのか、数量まで入れるのか、エラーが出たらどう対応するのか。迷わず使えるように、バーコード貼付と読み取り時のルールを設定しておきましょう。
ポイント4:段階的な導入
いきなり全社導入すると現場がついてこない、というのはよくある話です。まずは一つの工程で試験運用し、うまくいったら全工程、さらに外注先へと広げていくのが安全です。
完璧を求めすぎず、「まずはやってみる」「現場の声を聞いて改善する」の繰り返しが成功への近道です。小さな成功を積み重ね、バーコード管理の導入に対する共感を得ていきましょう。
ポイント5:継続的な改善
バーコード管理は、導入したまま改善しなければ効果が薄れます。月1回でも運用状況を確認し、問題点を洗い出して改善する仕組みをつくりましょう。
効果測定も忘れずに実施します。作業時間がどれだけ短縮されたか、ミスがどれくらい減ったか、従業員が使いやすいと感じているか。こうしたデータを押さえておくことで、次の改善策も打ちやすくなります。
バーコード管理でよくある質問
最後に、バーコード管理に関するよくある質問と回答をまとめました。
Q1: バーコードが汚れて読めなくなったらどうする?
A: 同じバーコードを何枚でも再発行できます。現場にラベルプリンターを設置すれば、必要な時にすぐ印刷可能です。
Q2: スマートフォンでも読み取りできる?
A: QRコードなら一般的なスマートフォンのカメラで読み取り可能です。専用アプリを使えば、より確実に読み取れます。
Q3: 既存の管理番号は使える?
A: 既存の番号をバーコード化することも可能です。
Q4: 導入費用はどのくらい?
A: 最小構成なら、バーコードリーダー約4,000円とラベルプリンター約3万円で導入可能です。生産管理システムと連携する場合は別途費用が発生します。ランニングコストはラベル代が月数千円程度です。
Q5: 現場の人が使えるか心配
A: バーコード読み取りは「ピッと読むだけ」の簡単操作です。年配の方でも1日で覚えられます。
Q6: 紙管理からの移行が大変
A: 製造業の現場はまだまだ紙管理が主役だと思います。紙をやめてまでシステム化というのは大掛かりな変化になりすぎてとても大変です。職場の中を紙が流れている今の環境にバーコードを追加するだけでデジタル管理が実現できると考えるととてもお手軽です。実はバーコードの導入は紙の管理からお手軽にシステムを導入するのにも相性がバツグンで有効な手段になるのです。
まとめ:バーコード管理で製造業の効率化を実現
バーコード管理は簡単操作で、製造業の生産性を大きく向上させるツールです。作業時間の短縮、入力ミスの削減、リアルタイムの進捗管理、コスト削減といった効果は、現場と経営の両方に直結します。
生産管理にバーコードを導入するにあたって、次の4つが成功のポイントです。
- 適切な機器選定
- 明確な運用ルールの設定
- 段階的な導入
- 継続的な改善
まずは、小さな範囲から始めて、効果を実感しながら段階的に拡大していくのが理想です。あなたの工場も効率的な管理体制に変わっていくでしょう。